Meycough Works

さよならの鎖編み

  1. tanka
  2. here

荒れた手で髪を洗えば絡みつく思考の残滓に傷つけられる

アーケード街を歩いて知っている気がする人の名前を拾う

足音が近づいてくる説明のできない感情ゆらゆらさせて

広々と夕日のたまる空があるもう帰ろうか細長い影

見たことを全て晒して話す時やわらかな時の触れる掌

黄昏の音がしているはっきりと闇の輪郭が浮かびあがる

心とは形状維持ができなくて痛覚だけが通った臓器

膚を裂く雪風がまだ痛覚は残っていると教えてくれた

今日もよくがんばりました見上げれば細い括弧の片割れの月

睨んでる双眸だけがその影を縫いとめているのかもしれない

夕闇が遅延している冬ただなか蛍光灯はレの音がする

吸いさしが細く煙を吐いている忘れた思い出をしまう場所

方眼のノートに文字を書き入れる律儀にペンの影がにじんだ

さよならを鎖編みして潔く冬の夕暮れ暮れてく がちゃり

触れられぬほど離れてはないけれどやさしい距離で眠れない夜

真夜中よ永遠なれぼそぼそした声が耳に届いているこのときよ

まっさらな冬の早朝はりつめた空気に光が凍ってみえる

息が見えるホットミルクもすぐ冷めるはっきり重い雪の結晶

微笑みの意味に今さら気がついた氷柱をつたう水滴の咎

いくつかの器官で再現してみよう嘘と現と幻の冬